「本を読んで新しいマネジメント手法を試してみたが、部下の反応が悪く、かえってギクシャクしてしまった」
「あのカリスマ社長のやり方を真似しているのに、どうしても空回りしている気がする」
マネージャーとして日々奮闘している方なら、一度はこのような挫折感を味わったことがあるはずです。その失敗の最大の原因は、「自分の本来の特性(生まれ持った強み)」に合っていない借り物のリーダーシップを無理して演じていることにあります。
強力なリーダーシップを発揮するために、自分を偽って全く別の「理想の人間」になる必要はありません。本当に重要なのは、自分自身の軸(特性)を客観的に認識し、それを活かせる「自分に最適な基本スタイル」を見つけることです。
本記事では、自分の特性を可視化する簡単な診断チェックを用いて、あなたがいま採用すべき「最適なリーダーシップの型」を発見するまでの具体的なステップを解説します。
真のリーダーは「自己熟知」から始まる
著名な経営学者ピーター・ドラッカーは、「何事かを成し遂げるのは、強みによってのみである。弱みによって何かを行うことはできない」と語りました。
リーダーシップも同様です。あなたが本質的に「論理的で数字を追うこと(P機能)」が得意なのか、それとも「チームの感情に寄り添うこと(M機能)」が得意なのかによって、最初に取り組むべきマネジメントのアプローチは全く異なります。(参考:PM理論でリーダーシップを自己分析!最強チームを作る4つの型)
自分と合わないスタイルを無理に実行すると、部下にその不自然さ(嘘っぽさ)が見透かされ、かえって信頼を失います。まずは「自分の現在地」を診断チェックで把握しましょう。
【自己診断】あなたのリーダー特性チェック
以下の10の質問に対して、あなたの「普段の自然な行動や思考」に最も近いもの(AまたはB)を選び、どちらの数が多かったかを数えてください。
Q1. プロジェクトを開始する時、最も気になるのは?
(A) 明確な目標数値とスケジュールの達成
(B) メンバー全員が納得して前向きに取り組めるか
Q2. 部下が仕事でミスをした時、最初に取る行動に近いのは?
(A) 原因究明と再発防止策をすぐに指示する
(B) 本人の落ち込み具合を確認し、まずは話をじっくり聞く
Q3. 会議でのあなたの振る舞いは?
(A) 率先して意見を出し、結論へと素早くリードする
(B) 先に周囲の意見を出し尽くさせ、意見をまとめることに徹する
Q4. 褒められて最も嬉しいポイントは?
(A) 「圧倒的な成果・数字を出しましたね」
(B) 「あなたのおかげでチームが本当に成長しましたね」
Q5. 業務の進め方の方針は?
(A) 効率を最大化するための最適なプロセスをカッチリ決めたい
(B) ルールよりも、メンバーが自由にチャレンジできる裁量を与えたい
Q6. これから目指す組織の理想像は?
(A) 指示系統が明確で、一切の無駄なく勝利する軍隊のような強い組織
(B) お互いを助け合い、各自が自律的に動く家族のような温かい組織
Q7. 意見の対立(コンフリクト)が起きた時の対応は?
(A) 合理的に判断し、正しい方をトップダウンで即決する
(B) なぜ対立しているのか背景を紐解き、折衷案や双方が納得する道を探る
Q8. 情報共有において重視しているのは?
(A) 進捗やKPIなど、業務に必要なデータのみを迅速に共有する
(B) 業務外の悩みや、チームの感情面でのコンディションも共有する
Q9. あなた自身の原動力(モチベーション)は?
(A) 高い目標をクリアしていく達成感
(B) 全員で一丸となって壁を乗り越えた時の連帯感
Q10. あなたが感じる「リーダーの最も重要な役割」とは?
(A) 前例のない変革を起こし、組織を牽引すること
(B) 部下にとっての障害物を取り除き、能力を最大限に引き出すこと
【現役管理職の見解:リーダーシップに「自分」を取り戻す】
世の中には「理想のリーダー像」が溢れている。強い決断力、圧倒的なカリスマ、あるいは献身的なサーバント。僕もかつては、それらの「型」を無理に自分に被せようとして、現場を大混乱させた苦い経験がある。当時の部下から「今のあなたには血が通っていない気がする」と言われた時の衝撃は、今でも忘れられない。
結局、マネジメントの本質は「自分というOS」と「チームというシステム」をどう最適に接続するか、という点に集約される。OSが違うのに、無理やり他人のドライバをインストールすれば、システムにバグが起きるのは当たり前だ。まずは自分の特性を、冷徹なまでに客観視すること。今回の診断チェックも、自分を定義するための檻ではなく、自分という道具を「乗りこなす」ためのスペック表だと捉えてほしい。
自分の弱みを消そうとするより、その凹凸がチームのどこにフィットするかを考える方が、システム全体としてはよほど機能する。正解の型なんてない。でも、自分の特性に基づいた「知恵」は、現場であなたを助ける最強の武器になる。誰かのマネではない、あなただけの「不格好なリーダーシップ」でいい。そこからしか、本当の意味での信頼は始まらないのだから。
診断結果:あなたに最適な「ベーススタイル」
あなたが直感的に選んだ回答の数で、あなたのベースとなる(最も自然に発揮できる)基本スタイルがわかります。
【タイプA】Aの回答が7個以上:「牽引・成果追求型ベース」
あなたは本来、「目標に向かって突き進むエネルギー」と「合理的な判断力」に満ちたリーダーです。変革型リーダーシップの重要性とは?VUCA時代に必要な資質と事例で語られるような、強力な旗振り役になれる素質があります。
* 最適な基本スタイル:
* ビジョン型リーダーシップ(ゴールマンの6類型より)
* PM理論における「大P小m型」からのスタート
* 活かすべき強み: 決断力の速さと、迷いなくチームを引っ張る力は、危機の突破や新規事業で圧倒的な力を発揮します。
* 意識すべき次のステップアップ: 成果を焦るあまり、「ペースセッター型(俺についてこい)」や「強制型」に行き過ぎてしまい、部下を疲弊させるリスクがあります。あなたの次のステップは、自分の強みを活かしつつも、あえて「歩みを止めて部下の悩みを聴く(コーチング型リーダーシップ)」時間を意図的に作ることです。
【タイプB】Bの回答が7個以上:「支援・関係構築型ベース」
あなたは本来、「他者の感情に寄り添う力」と「場を調和させる力」に長けたリーダーです。トップダウンで命令するよりも、下から支えるマネジメントの才能があります。
* 最適な基本スタイル:
* サーバント・リーダーシップ
* 関係重視型・民主型リーダーシップ(ゴールマンの6類型より)
* 活かすべき強み: 高い心理的安全性を構築し、離職を防ぎ、部下がのびのびと活躍できる環境(土壌)を作る天才です。サーバントリーダーシップとは?特徴・メリットと実践の5ステップの記事が、あなたの強みを最大化するヒントになります。
* 意識すべき次のステップアップ: チームの和や「嫌われたくない」という感情を優先するあまり、厳しいフィードバック(アサーション)ができず、業務のスピードが落ちたり規律が緩んだりするリスクがあります。あなたの次のステップは、ベースの優しさは保ったまま、基準に満たない結果に対しては毅然と「No」を突きつける(SL理論における「教示型」への的確な切り替え)勇気を持つことです。
【タイプC】AとBの回答が4〜6個(均衡):「柔軟・バランス型ベース」
あなたは、「成果の追求」と「人間関係の構築」のバランス感覚に優れた柔軟なリーダーです。
* 最適な基本スタイル:
* 状況適応型リーダーシップ(SL理論)
* PM理論の「大P大M型」に近いポテンシャル
* 活かすべき強み: 状況や相手に応じて臨機応変に態度を変えられるため、極端な組織崩壊は起こしにくいタイプです。
* 意識すべき次のステップアップ: 何事も無難にこなせる反面、「器用貧乏」になって単調なマネジメントに陥るリスクがあります。「ここぞ」という変革のタイミングでは、あえて「強力なビジョン(Aの要素)」を情熱的に語り、チームを熱狂させるといった、尖ったアプローチを意図的に取り入れることでワンランク上のリーダーへと覚醒します。
まとめ:自分の「ベース」を知り、足りない「武器」を増やす
「自分に最適なリーダーシップ」とは、最終的には一つのスタイルに落ち着くことではありません。
最高のリーダー像とは、「自分の最も自然なベーススタイル(ホームグラウンドの強み)を自覚した上で、自分に不足している、あるいは違和感のあるスタイルにあえて挑戦し、使える武器(クラブ)の数を一つずつ増やしていく状態」です。
まずは今回の自己診断で判明したご自身の「ベース(強み)」に自信を持ち、明日からチームにどう貢献できるかを再定義してください。その上で、リーダーシップスタイル全15種類を徹底解説!を紐解き、今の自分が持っていない「新しい武器(スタイル)」を、週に一度の1on1など小さな場面から意図的に練習し始めてみましょう。
関連記事
さらに理解を深めるための完全版ガイドはこちらをご覧ください。
* リーダーシップスタイル全15種類を徹底解説!自分に合う選び方


コメント