SECIモデルの身近な例をわかりやすく解説|職場でよくある具体例つき

2 人材育成・採用

SECIモデル(共同化・表出化・連結化・内面化)という言葉を聞くと、なんだか難しくて学術的なものだと感じてしまいませんか?
しかし、紐解いてみると、私たちが普段の生活や仕事の中で「無意識にやっていること」を言語化したステップにすぎません。

この記事では、「SECIモデルとは?」という基本を復習しながら、日常の料理や、営業・接客・ITなどの職場でよくあるシーンを通して、SECIモデルの全体像を「身近な例」でわかりやすく解説します。

「理論は知っているけれど、実務でのイメージが湧かない」という悩みを持つ管理職やリーダーの方は、ぜひ現場に置き換えて読んでみてください。

7. 本文

SECIモデルを「料理のレシピ」の身近な例で例えると?

SECIモデルの核となる「暗黙知を形式知に変え、また暗黙知に戻す」サイクルを、一番身近な例である「料理の伝承」に当てはめてみましょう。
これだけで、4つのプロセスの全体像がすっきりと理解できるはずです。

共同化:おばあちゃんの料理を見て覚える

共同化(暗黙知→暗黙知)のプロセスです。
あなたは、料理上手なおばあちゃんから「秘伝の煮物」の作り方を教わることになりました。おばあちゃんはレシピを持っておらず、「これくらい煮詰まったら」「塩をひとつまみ」といった感覚(暗黙知)で料理をしています。
あなたは横に立ち、火加減の様子や味見のタイミングを一緒に見て、体験として学びます。

表出化:目分量だった調味料を「大さじ1杯」とメモする

ここが最も重要な表出化(暗黙知→形式知)のプロセスです。
あなたはおばあちゃんに「ひとつまみって、小さじ半分くらい?」と質問しながら、自分のノートに「醤油は大さじ2、煮込み時間は中火で15分」という明確な言葉と数値(形式知)で書き起こします。これで、誰が読んでもある程度同じ味が再現できる「レシピ」が誕生しました。

連結化:他のレシピと組み合わせて「1週間の献立表」を作る

連結化(形式知→形式知)のプロセスです。
作成した煮物のレシピ(形式知)を、あなたが以前から持っていた別のレシピブック(形式知)と一緒にバインダーへまとめ、「和食の1週間献立表」として体系化します。これにより、単なる1品のレシピから、「毎日の晩ごはんのローテーション」という新しい価値(形式知)が生まれました。

内面化:レシピを見ずに何度も料理し、自分の味にする

内面化(形式知→暗黙知)のプロセスです。
あなたはバインダーの献立表(形式知)を見ながら毎日料理を数ヶ月続けました。すると、いちいちレシピを見なくても自然と手が動き、さらに「今は冬だから少し味を濃くしよう」といった自分なりの新たな勘(新たな暗黙知)が身につきました。

これがSECIモデルの基本的な1周のサイクルです。これを職場に置き換えるとどうなるかを見ていきましょう。


職場におけるSECIモデルの具体例(1):接客・サービス業

店舗ビジネスなどにおいて、「クレーム対応が非常にうまい店長」がいるとします。

「なんとなく」のクレーマー対応をマニュアル化する

  • 共同化:新人が店長のクレーム対応に同席し、声のトーンや相槌の打ち方を学ぶ。
  • 表出化:対応後、店長に「なぜあのタイミングで謝罪したのか」を聞き、「最初の3分は絶対に遮らずに話を聞く」というルールをメモする。
  • 連結化:そのメモを、本部の「基本接客マニュアル」の末尾に「クレーム対応の極意」として追記・統合する。
  • 内面化:新人がそのマニュアルを何度も読み込み、実際のクレーム対応を繰り返す中で、無意識に冷静なトーンで対応できるスキル(暗黙知)を手に入れる。

職場におけるSECIモデルの具体例(2):ITエンジニア・開発部門

システム開発の現場でも、エラー解消のノウハウ(トラブルシューティング)が属人化しやすい傾向にあります。

トラブルシューティングの「職人技」を社内Wikiに残す

  • 共同化:ベテランエンジニアがサーバー障害を復旧させる際、若手がコンソール画面の後ろに張り付いてコマンドの打鍵を見て学ぶ(ペアプログラミング)。
  • 表出化:「なぜまずデータベースのログを見たのか」を若手が質問し、「この種のエラーはDB起因が9割だからだ」という知見を引き出し、原因特定のフローチャートを作る。
  • 連結化:作成したフローチャートを、既存の「障害対応手順書」や「社内Wiki(Confluenceなど)」のトラブルカテゴリーにリンク付けして体系化する。
  • 内面化:若手がそのフローチャートを使って何度か実機でアラート対応を行い、次からはフローチャートを見ずとも「直感」で障害の切り分けができるようになる。

職場におけるSECIモデルの具体例(3):企画・マーケティング部門

マーケティング部門では、クリエイティブな「企画力」もSECIモデルで形式知化することが可能です。

「ヒット企画の作り方」をフレームワーク化する

  • 共同化:ヒット連発の先輩プランナーが行うブレスト会議に若手が参加し、アイデアの発散や壁打ちの雰囲気を共有する。
  • 表出化:先輩の思考プロセスを付箋を使って可視化。「ターゲットを極限まで絞り、その人の1日のタイムスケジュールを想像している」という事実を「ペルソナシートの裏技」としてスライドにまとめる。
  • 連結化:そのスライドを、新入社員向けの「マーケティング基礎研修資料」として組み込む。
  • 内面化:若手が実際にその資料を使って数ヶ月間企画立案を繰り返し、やがて呼吸をするようにターゲットの解像度を高められるようになる。

こうした各業界のより大規模な導入事例にご興味がある方は、SECIモデルの事例の記事もあわせてお読みください。


現役管理職の見解|「身近な例」をチームで共有すると、学びが一気に加速する

管理職としてマネジメントをしていると、「うちのチームにはSECIモデルを語れるほど高度なノウハウなんてない」と感じることがあります。私自身もそうでした。大企業の成功事例のような派手な話ではなく、日々の地味な工夫ばかりに見えていたからです。

ただ、1on1や振り返りの場でメンバーの話を丁寧に聞いていくと、「クレームの温度を下げる一言」「エラーが出たときにまず確認するログ」「お客様が反応しやすい資料の順番」など、実は“身近だけれど再現性の高いコツ”が山ほど埋まっていました。本人は「たいしたことではない」と言うのですが、他のメンバーからすると喉から手が出るほど知りたい情報だったりします。

SECIモデルを現場で活かすうえで、管理職にできる一番の貢献は、こうした身近な例を引き出し、言葉にして、チームで共有することだと感じています。壮大な変革プログラムよりも、「昨日のクレーム対応でうまくいった点を3つ出してみよう」くらいの小さな問いかけのほうが、現場には馴染みやすい。難しい理論を持ち込むというより、日々の仕事の中にすでにある知恵を、SECIの4プロセスに沿って少しずつ整理していく。その積み重ねが、結果として組織学習の土台になるのだと思います。

まとめ:身近な業務から「暗黙知の言語化」にチャレンジしよう

今回は、「おばあちゃんのレシピ」から始まり、接客、IT、企画など職場でよくある様々なSECIモデルの「身近な例」をご紹介しました。

SECIモデルは決して難しいものではなく、ベテランの「背中を見て学ぶ(共同化)」部分から一歩踏み出し、「なぜそうしたのか?(表出化)」と問いかけて言葉にしていく作業の連続です。

管理職の皆様は、自チームで一番「属人化してブラックボックスになっている業務」は何かを見極め、まずはそこから「言葉にして共有する」仕組み作りを始めてみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました